第5章 ボクはキミを
―――陸の部屋。
「アイドルを…辞める…?」
「そうだよ。期待に応える。約束を守る。この世界にはプレッシャーが多い。……陸には厳しい世界だ。だから……」
「父さんたちが間違ってたから、天にぃは九条についていったの?」
「………」
「じゃあ、結局見捨てたんじゃないか……」
「陸……」
「間違ってるならそう言えばよかったじゃないか!助けてあげればよかったじゃないか!お店なくなって、天にぃがいなくなって、お母さんもお父さんも泣いてた。オレだってずっと泣いてた……オレの世話を押し付けられるのが天にぃは嫌だったんじゃないかって……」
「陸……違う。ボクは……」
「っ触るな……!家族が一番つらいときに、天にぃはオレ達を捨てたんじゃないか!…っけほ……店を潰した九条が正しいからって……っそれだけの理由で!」
「陸、興奮したらだめだ。落ち着いて話を……」
「天にぃはずるいよ!自分は家族を捨ててアイドルになったくせに…オレにはやめろなんて…オレはずっと……大人になって丈夫になったら、天にぃが一緒に歌おうっていってくれると思ってた……天にぃと零ねぇとオレと三人で、歌おうって言ってくれると思ってたのに……!…はっ……はっ……でも、天にぃに、オレは、必要とされてなかったんだっ……」
「陸、それは違うよ……陸を忘れたことは一度も」
――「てんてんちゃーん。ミルクですよー」
「ボクたちは生まれたときからずっと一緒だったじゃないか。だから……」
――「宴しようぜ~~♪あはははは!」
「………ボクが言いたいのはつまり……」
――「毎度ー。そば処山村でーす」
「………うるっさい!!」