第5章 ボクはキミを
一方、陸の部屋――。
「て、天にぃ!?……っゆ、夢!?」
「夢じゃないよ」
「ほ、ほんもの…?」
「そうだよ。零と陸に会いに来たよ」
「……天にぃ……」
「えらいね。ちゃんと部屋きれいにしてる。具合は?先生の所に通ってるの?」
「う、うん!」
「夜は眠れてる?だめだよ、しっかり休んで冷やさないようにしないと」
久しぶりに、兄弟水入らずで話す時間――。
「あ、なんか飲む?ご飯は?」
「大丈夫」
「そっか!えっと…あはは。会ったらいろいろ話そうと思ってたのに、全部吹き飛んじゃったな」
「はは……。じゃあ、ボクから話すよ。座って」
天に促され、陸は腰をおろす。天も向かい合うように座ってから、ゆっくりと口を開いた。
「陸、好きな子いる?」
「えっ……!?い、いないよ……気になる子はいるけど……」
「もし、その子と、なかなか会えなかったら寂しい?」
「……すごく寂しいと思う……」
「久しぶりにその子と会う約束をしたのに、その子が来られなくなってしまったら?」
「寂しいと思う……それに、心配するかな……」
陸は言いながから、淡々と話す天の顔を見上げた。
「……もしかしてオレ、今恋愛相談されてる?天にぃは……零ねぇのこと、変わらず…?」
「……そうだね。陸の知ってる通りだよ。でも、零のこととは別」
「……どういうこと?」
「零のことが好き。それは紛れもない事実だし、昔も、今も、これからも変わらない。でもね、TRIGGERの九条天の恋人は零じゃない。ファンだよ」
「………」
「ファンを悲しませることはしたくない。ファンと交わした約束は決して破らない。アイドルなら当然のことだよ」
「…約束?」
「コンサートチケットだ。その日、必ずそこに行って、ファンのために笑顔で全力を尽くす。キミは約束を守れない。これまでも、これからも」