第5章 ボクはキミを
「OH…とても有意義な時間でした」
「あのアニメ、前に何回も見たんだけど…あれ?リビング、誰もいないね」
まじこなのDVDを見ていたナギと壮五がリビングに来てみれば、誰もいないようだ。
「今日は零さんが帰ってくるって言ってたから、みんな揃ってるはずなんだけど…どこ行ったんだろう」
「シチューと王様プリンあります。タマキのでしょうか?」
そんな会話をしていれば、ガチャガチャと鍵の開く音がした。
「零さんかな?」
ナギと壮五が慌てて玄関まで駆けていく。開いたドアの先にいたのは――。
「こんばんはー!Re:valeでーす!」
急に現れた百と千に、壮五は驚き声をあげる。百の後ろから、零がひょこっと顔を出した。
『壮ちゃん、ただいま』
「零さんっ!おかえりなさい…!Re:valeさんと一緒に帰ってきたんですか!?! 」
『ごめん…急に決まっちゃって…』
申し訳なさそうに謝る零の横で、千と百が口を開く。
「君んとこのリーダーに着拒されて、憤慨の意を伝えに来たんだ。彼はいる?」
「オレは特殊任務のため、ナギを探しに!……ああ、いた!良かった!これで地球の平和が守れる!」
「OH!スペシャル・ミッション!エキサイティングでーす!」
『あはは……』
事情を知っている零が苦笑していれば、壮五が口を開く。
「ナギくん、納得するの早いよ!あの…大和さんは出掛けてて…」
「じゃあ、君の部屋で待つか」
「えっ…!?」
「あー!王様プリンだ!オレ好きなんだ!食べていい?」
『あれ、王様プリンがこんなに……(天に頼んじゃった……そんなにあったら一織くんに怒られそうだな……天もたくさん買ってくるだろうし、止めなくていっか!)』
「いい匂い。シチューじゃないか。夕食まだだったんだ」
プリンにはしゃぎ出す百。
夕食を頂く気満々の千。
「いや、あの……」
「「Re:valeは先輩だよね?」」
百と千の声が重なる。
壮五が零に視線をやれば、彼女は顔の前で申し訳なさそうに手を合わせていた。
「……ど……どうぞ部屋でごゆっくり、お召し上がりください……」
壮五の消え入りそうな声が、玄関に虚しく響いたのであった。