第4章 新世界への前奏曲
「……っ、すいません。もう一回お願いします……!」
苦しそうな陸に、零が駆け寄る。
『陸、大丈夫?体調よくないの?』
「ごめん、零ね……さん……迷惑かけて……」
陸と零の様子を見ながら、メンバー達は心配そうに眉根を寄せる。
「やっぱり調子が悪いみたいですね」
「収録も押してる…陸くん大丈夫かな……」
「これで5テイク目だよ。Re:valeも零ちゃんも待ってるんだから……」
ディレクターの呆れたような声に、陸が謝れば。
「そんなプレッシャーかけたら、余計に歌えなくなるだろ」と千。
「そうそう。オレたちは大丈夫だからさ」と百。
『一回休憩挟もう。ね?』と零。
「でも、そんな……大先輩の番組で迷惑は……」
陸の言葉に、百は優しく笑いながら言った。
「後輩を助けてこそ、先輩面ができるってもんでしょう。すいませーん、一回休憩くださーい!」
『太田さん、お願いしますっ!』
百の掛け声と、零の縋るような声に、ディレクターはやれやれと肩を竦めた。
「もー、百ちゃんも零ちゃんも、甘いんだから。二人に頼まれちゃ、断れるものも断れないよ!」
『あはは、ごめんなさい』
「ごめんごめん!今度、借りは返すから!」
百と零のコンビネーションで、先ほどまでピリピリしていたディレクターの顔つきが一気に緩む。
心底申し訳なさそうに謝る陸の背中を、千がぽんと優しく叩いた。
「謝らなくていい。あったかいものでも飲んできな。零が君のために、ホットココアを用意してたよ」
「!あ、ありがとうございます……っ。なんてお礼を言ったらいいか……」
「僕らのことは気にするな。そのうち、君たちに後輩ができたら、助けてやってくれ」
「そうそう。いつも通り、いい声で歌って。期待してるよ!」
『ちょっと百、プレッシャーかけないで!』
「あわわ、ごめん!そんなつもりじゃないんだ。リラックスして。変顔しようか?」
「ははっ、大丈夫です……っありがとうございます……っ!」
控室に戻る陸を見送ってから、百は三月に声をかける。
「三月、三月!ちょっとおいで!」
「オレですか!?はい!」