第4章 新世界への前奏曲
いくら室内で暖房が効いているとは言え、やはり冬は体の芯から冷え込む。ひんやりと冷たい指先に、ココアの温かさがじんわりと伝わってきた。
―――陸は、大丈夫だろうか。
ふと、そんな疑問が頭に浮かぶ。年末のブラホワで会って以来事務所に帰れていないので、陸にもIDORiSH7のメンバー達にも会えていない。
ブラホワでTriggerを下し、もうすぐ冠番組が始まるIDORiSH7は今まさに波に乗っている状態だろう。けれど、陸の病気は冬に弱い。乾燥する季節では、どんなに念入りにケアをしていても本調子で歌うことは難しいだろう。
「あ、そういえばさ!IDORiSH7といえば、冠番組始まるんだって?」
陸の体のことを考えていれば、百から声が掛かる。顔を上げれば、真上から覗き込んで来た百の顔が零の視界を覆った。
『近っ』
「ブラホワのIDORiSH7、超かっこよかった!今度オレたちの番組にもゲストとして来てもらおうよ!」
「いいね、賛成。大和くんとも話したかったし」
『え、千ちゃん、大和くんと知り合いなの?』
「あれ、零に話してなかったっけ?僕達がまだ駆け出しの頃、よく彼のお父さんに世話になってたんだよ。洗車したりして、お小遣いもらったり」
『へえ……世間って狭いね。でも千ちゃんが洗車しちゃうくらいの相手って大和くんのお父さん何者?』
「千葉志津雄さんだよ」
『………は!?』