第4章 新世界への前奏曲
毎年大晦日に行われるBigイベント”ブラックオアホワイト”を終え、昨年同様総合優勝を飾ったRe:valeと準優勝を飾った零―――トラブルに巻き込まれたりもしたけれど、なんとか無事に一年を締めることができた。
が、彼らのスケジュールに、相変わらず休息の二文字はないようだ。
年明け早々から各番組に引っ張りだこの三人は、元旦から大忙しだった。
『………し、しぬぅ………!』
「ちょっとちょっと!オレを置いて先にいなくなるなんて許さないよ!?オレも連れてって!」
「それじゃ、僕もご一緒しようかな」
「こら、零ちゃん!百くんも千くんも、ふざけたこと言ってないで仕事してください!」
おかりん、もとい岡崎凛人の言葉も、右から左へ抜けていくようだ。
年末年始だというのに、休みはゼロ。睡眠時間も一日二時間取れれば良い方。そんな超過密スケジュールをこなしているのだから、弱音を吐きたくなるのも無理はない。
『……はあ……自分のベッドが恋しい……』
「モモちゃんは毎日ハニーと一緒にいれて幸せだよ!」
『もう百には飽きた……』
「そうね。そろそろ飽きてくる頃だよね」
「冗談でも傷つくんですけど!?」
Re:valeの二人と零は、普段でもただでさえセットでの撮影や収録が多いのにも関わらず、今年のブラックオアホワイトでも優勝と準優勝を果たしたため、一緒の仕事が更に倍増していた。ここのところ、毎日・・・というよりも”常に”一緒の時間を過ごしている。
『はあ~~……IDORiSH7の子達が恋しい』
「うわっ、堂々と浮気宣言!!」
「まあまあ。毎日カレーばかり食べてたら、たまにはオムライスも食べたくなるじゃない。そういうことだよ、モモ」
「オレは毎日カレーでも全然大丈夫だもん!オムライスなんていらないよ!」
百と千のいつも通りの漫才を聞き流しながら、零はだらーっと項垂れ、机の上に置いてあるホットココアを手に取った。