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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第3章 交錯する想い




零を寮まで送り届けた後、百は天を家まで送っていた。


「百さん、今日は本当にありがとうございました」

「こちらこそだよ!天が電話くれなかったら、大変なことになってた」

「でも百さんがいなかったら、零を助けてやれませんでした」

「だからお互い様!」

「……はい」

「あんなに焦る天の声、初めて聞いたから、びっくりしたよ」

「…そうですね。ボクもあんなに取り乱したのは生まれて初めてです」


そんな会話をしながら、そろそろ天の家が見えてきた時だった。


「……百さん、一つ聞いていいですか」

「うん、何?」

「……零のこと、好きなんですか?」


天の問いに百は僅かに瞠目してから、すぐに八重歯を出して笑い、言った。


「好きだよ。」

「……そうですか」



天が返事をしたのと同時に、車が停まる。丁度九条家に到着したのだ。
天は車を降りてから、口を開いた。


「百さん、今日は本当にありがとうございました」

「こちらこそだよ!疲れただろー?ゆっくり休んで!」

「はい。百さんも」

「うん!またね、天!おやすみ」


百が笑顔でそう言うと、天も優しく笑いながら「おやすみなさい」と小さく答えた。



「……ほんと、強敵」


ぼそり、と呟いた独り言は、車のエンジン音にかき消される。車が見えなくなるまで、天はずっとそこに立ち尽くしていた。

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