第3章 交錯する想い
相変わらず散らかっている部屋の中心に座らされ、百は返り血を流すためにさっさとお風呂場へと行ってしまった。
部屋には、天と零の二人きり。
どことなく気まずい沈黙が流れる。その沈黙を先に破ったのは、零だった。
『……天……その……、ありがとね……本当に』
「……知らない」
『……お、怒ってる?』
「怒ってないわけないでしょう?零に何かあったらって、そんなこと考えるだけで気がおかしくなりそうなのに」
『天……心配してくれたんだ……ふふ、ありがとう』
そういって、零ははにかみながら笑った。
「………、」
―――何、それ。
なんで、そんな嬉しそうな顔してるの。
あんなに怖い目に遭ったくせに。
意味がわからない、本当……。
『久しぶりだね、会話するの』
「……そうだね」
『天、いつも目合わせてくれないから』
「……それは、」
天が言いかければ、お風呂場の方から声が聞こえてくる。
「零ー!天にももりん出してあげてー!」
百の声に、零はわかった、と返事をして腰をあげる。睡眠薬は、もうほとんど抜けたようだ。零はキッチンまで行くと、慣れた手つきで棚からコップを出してから冷蔵庫を開けた。
『天、何がいい?っていっても、この家ももりんと水しかないけど』
そういって眉を下げて笑う零に、天の胸はちくり、と痛む。
―――なんで、そんな慣れてるの?
そんなにしょっちゅう、この家に来てるわけ?
「……いらない」
『そう?じゃあ、ももりんで』
「だからいらないってば」
『はいはい』
天の返事をあしらいながら、零は三人分のコップにももりんを注ぎ始める。
そんな零を目で追いながら、天は口を開いた。
「……随分慣れてるんだね。まさかとは思うけど一緒に住んでるの?」
天の問いに、零はきょとん、としてから、あははと笑い始めた。