第3章 交錯する想い
「天!早く乗って!」
スタジオを飛び出した天の元に、百が車で迎えに来る。
天が車に飛び乗れば、百はぎゅっとハンドルを握りしめた。
「ちょっと本気出しちゃうよ。シートベルトしっかりね!」
「はい!」
二人の乗る車は、目的地へと向かって走り出した。
辿り着いたのは、人気のない場所に佇む豪奢な入口のクラブだった。
急いで車から飛び降り、二人は階段を降りる。
「多分、ここで間違いないっ……」
「さすが情報通の百さん……はあっ……はっ」
ライブ中でも、こんなに息切れなんてしないし、汗もかかないのに。二人は、汗だくになりながら息を切らして、騒がしいクラブのダンスフロアを零を捜しまわりながら駆け抜けた。
そして、奥にあるvip roomの扉を勢いよく開く。そして、飛び込んできた光景に、天の頭は真っ白になった。
「……零……」
梢を中心に、ぐったりとした零を囲む下品な顔をした男たち。
男が、零の服に手を伸ばしている。
天が、あまりの怒りに震えて拳を握りしめた、瞬間だった。
白と黒のツートンカラーが、ふわりと視界を遮った。
「てめぇら……何やってんだ!!このボケッ……零に触んな!!」
飛び出したのは、百だった。
自分よりも図体の大きい男たちを、ばったばったとなぎ倒していく。身軽な体から繰り出される拳と蹴りは、まるでアクション映画でも見ているような、そんな錯覚に陥ってしまいそうだ。
天は、一目散に零の元へと駆け寄った。
「零……!零!!」
『………て、ん?』
今にも消え入りそうな声で、零は天の名前を呼ぶ。
「……零……遅くなってごめん……もう、大丈夫だから……ごめん……」
天は大きな瞳いっぱいに涙を浮かべ、零をぎゅっと抱き締めた。
『……天……どう、して……?』
「何もされてない……?」
『う、ん……お酒、飲んだだけで……』
「そっか……よかった……よかった……」
華奢な体をこれでもかというくらい抱き締めてから、天は近くにいた梢を睨みつけた。梢は、がたがたと唇を震わせ、床にへたりこんでいる。