第3章 交錯する想い
――ゆらゆらと、空間が歪んで、揺れている。
いや、空間が揺れているんじゃない。
自分の体が揺れているのだ。
――あれ、おかしいな。頭が、うまく回らない。
「おいおい、マジで折原 零じゃん!すげー、本物!」
「マジ感激!梢やるじゃん!なあ、マジでやっちゃっていいの!?」
「見直した?当たり前でしょ。顔がカメラに映るようにうまくやってよ!週刊誌に売ったら超高くつくから!」
――誰かの、声が聞こえる。
朦朧とした意識の中で、言葉を理解するのは難しかった。
なんで、こんな事になっているんだっけ。
確か、梢ちゃんと飲みに来て。VIPルームに連れていかれて、お酒を飲まされて。頭がくらくらして・・・。
「でも、ばれたらヤバくね?」
「大丈夫だって。酔いつぶれて乱交しちゃいましたー、なんて、よくある話じゃん?私は先に帰るねって言ったけど、零ちゃんはまだ残るって言ってたからーとか言い訳なんていくらでもできるし。睡眠薬盛った酒飲ませたから、寝たらしばらく起きないしろくに覚えてないでしょ」
「女って怖ぇー!」
梢がゆっくりと零に近づき、顔を近づける。
「――恨むなら、九条天を恨みなよ。私じゃなくて、あんたばっか見てる九条天が悪いんだから」
そう耳元で囁いて、梢はにっと愉しげに笑った。
『……て、ん……?』
朦朧とする意識の中で、その名前だけは聞こえた気がした。