第3章 交錯する想い
その頃、TRIGGERの楽屋では、音楽雑誌のインタビューが行われていた。
いつも通り、質疑応答に丁寧に答えていく楽と龍の横で、天は一人青褪めた顔をしていた。
エスカレーターですれ違った零の隣に、山南梢がいた。
二人が仲良くしていたことにも驚いたけれど、何より、嫌な予感がした。
”……覚えてろ……九条天。私にこんな仕打ちをしたこと、気が狂うほど後悔させてあげる”
山南梢の言葉が脳裏を過る。
もし。万が一。零に何かあったら――考えすぎかもしれないけれど、そう考えずには、いられなかった。
零の連絡先は知らない。陸たちに連絡をいれようかと思ったが、彼らは今新曲のMV撮影で沖縄にいると先ほど姉鷺さんが言っていたのを小耳に挟んだ。
ならば、すぐに連絡が取れるのは――零とプライベートも親しい百さんだ。電話を掛ければ、案の定零は山南梢と一緒にいると返ってきた。頭が真っ白になって、いてもたってもいられなくなった。
今直ぐにでも飛び出したい気持ちを必死に抑え込むので精一杯で、記者の言葉なんて何一つ入ってこない。
地獄のような時間を過ごしてから、終了の合図と共に、変装用の帽子とマスクを取って楽屋を飛び出した。
「ちょっと天!?」
「おい!?どこ行くんだよバカ!?」
――楽と龍の声が聞こえる。でも、今はごめん。ちゃんと、後で事情を話すから。
天は心の中で二人に謝ってから、急いで百に電話を掛けた。