第3章 交錯する想い
「零から?」
「いや、天からだ。珍しいな、どうしたんだろ」
百は不思議に思いながら、通話釦を押した。
通話口から聞こえてきた天の声は、いつもの冷めた声じゃなくて、どこか慌てているような、そんな声だった。
≪百さん、急にすみません。今大丈夫ですか?≫
「おー!天から電話なんて珍しいっ!なにかあった?」
≪すみません。零……、さんと連絡って取れてますか?≫
「零?急にどうしたの?さっきまでラビチャしてたけど、ここ一時間くらい返事きてないよ。零がどうかしたの?」
≪……何してるかとか聞いてますか?≫
「え?んーと、最近できたアイドルの友達と飲みに行ってるみたいだけど……」
≪!誰ですか!?≫
「山南梢って子……天、どうし――」
≪場所は?場所はどこですか?≫
「……ちょっと天、落ち着いて。どうしたの?」
≪……零が……もしかしたら危ない目に巻き込まれてるかもしれないんです≫
「!?なにそれ、どういうこと!?説明して」
百が慌ててそういえば、通話口から≪おい、天!早くしろ!始まるぞ!≫と、楽の声が聞こえてきた。
≪っ……すみません、事情は後で話します。百さん、場所ってわかりますか?≫
「……詳しい場所はわかんないけど、西麻布のクラブってことだけはわかってる。情報集めてすぐ向かうよ。場所がわかり次第天にも連絡いれるね」
≪お願いします……こんなこと頼んですみません。インタビュー終わったらボクもすぐに向かいます≫
「オーケー」
百は電話を切って、急いで上着を羽織り、帽子を被ってマスクを装着した。
「モモ、どうした」
「ユキごめん、事情は後で話す。オレちょっと出てくるからさ、おかりんにうまくフォローいれておいて」
「……わかった。一人で大丈夫か?」
「大丈夫!また連絡する!」
「待ってる。気を付けて」
千の心配そうな視線を背に、百は楽屋を飛び出した。