第3章 交錯する想い
零が連れてこられたのは、西麻布にある会員制のクラブだった。
豪奢な入口を潜れば地下へと階段が続いていて、扉を開けば大きなダンスフロアが広がっている。まだ21時前だというのに、店内は大勢の人で賑わっていた。
『うわあ、すごいね。クラブ?初めて来た……梢ちゃんはよく来るの?』
「小鳥遊プロさんって厳しいんですかー?しょっちゅう来てますよー!嫌なことがあったときには、踊るとすっきりするんですよね!ここ、店内暗いし芸能人とかしょっちゅう来るから、踊ってても全然目立たないし。あ、でもさすがに零さんは眼鏡と帽子とらないでくださいね!騒ぎになったら落着けないんで!」
『あ、うん、わかった』
ふわふわした可愛らしい梢のイメージとは似ても似つかないような場所に、零は少し驚いていた。てっきり落ち着いたバーなんかに行くつもりでいたから、ついきょろきょろしてしまう。
梢に腕を引かれ、フロアを歩いていれば、百からラビチャが入って来た。
<どこで飲んでるのー?☆>
零は片手でぽちぽちと返信する。
<クラブ?みたいなとこ!初めて来た!>
送信して、すぐに既読がつく。収録中じゃないのか?どれだけ自由なんだ。なんて思いながらつい笑ってしまう。
<なんですと!?そんな邪悪なところにいたらオレの可愛いハニーが穢れる!長居はダメ!ゼッタイ!>
百からすぐに返ってきたラビチャに返信しようと携帯をいじっていれば、梢の顔で遮られた。
「零さん、飲みましょー!」
『あ、うん!飲もー!』
「奥にある個室のVIPルーム貸し切ったんで、今日は存分に飲んじゃいましょ!」
『え!?び、VIP!?』
「さ、行きましょー!」
零は何が何だかよくわからないまま、携帯をポケットに仕舞い梢に腕を引かれVIPルームへと向かった。