第21章 もう一度ここから
『だから……もう一度、私の特別になって。私をもう一度、百の特別にして』
「………」
『ねえ、百―――っ』
―――言いかけた言葉を遮るように、思い切り抱き締めた。
ぼろぼろと溢れてくる涙で、もう前なんか見えなくて。
オレはこんなに泣き虫だったっけ?
かっこ悪いところばっかり見せてるはずなのに
それでも君は、オレの隣を選んでくれるっていうの?
「……っそんなこと言ったら、もう二度と離してなんかやれないよ……。…それでもいいの?」
『……そうじゃなきゃ困る。…私を、百の最初で最後にしてくれるんでしょ…?前に、そう言ってくれたじゃん。百の答えは……?』
「………ばか。オレ、ほんとばかだ……ごめん、ごめんね、零」
静かに身体を離してから、見つめ合う。
大きく見開かれた彼女の瞳は、まるで答えを告げてくれてるみたいに透き通っていて。そのまま、ゆっくりとキスを落とす。
「――好きだよ、零。誰よりも何よりも。君を愛してる。」
―――零はやっぱり、オレを幸せにする天才だ。
悲しみのどん底にいたオレを
言葉一つで、こんなにも幸せな気持ちにしてくれるんだから
きみに出会ったあの日、あの瞬間から
解けない魔法にかけられたまま。
これからもずっと。解けることのない魔法にかけられたまま。
夜が少しずつ開けていく。ささやかな光が息を吹き返す。
空を覆う雲が支配していた世界を、ようやく薄明かりが包んでいく。それはまるで、これからの二人を照らす、確かな希望のようだった。