第21章 もう一度ここから
「モモ、零―――!!」
ガチャ、と玄関の扉が開いた音と共に、聞き慣れた声が二人の耳を掠めた。
「大丈夫か………っ!って、零……その格好……」
慌てて部屋に飛び込んできた千が、ぽかん、と目の前の光景を見つめている。続いて入ってきた岡崎、そして万理も、みんな、同じ顔だ。
そんな顔になるのも、無理はない。
荒れ果てた部屋のど真ん中、脱ぎ散らかった零の服と、手錠、そして、裸同然で泣いている零を、抱き締める百。
「ユキ!おかりん!…バンさんまで!?」
「……百くん。これは一体どういう事か、ちゃんとした説明が欲しいな」
百の顔から血の気が引いていく。慌てて抱き締めていた腕を解放してから、零のことをこれでもかというくらい毛布でぐるぐる巻きにして万理の前に向かってスライディング土下座をしてみせた。
「す、すみませんバンさん…っ!!これは、オレが――」
「いや……ちょっと、モモ……悪いけど今回ばかりは庇いようがないな」
「百くん……みんな心配したんですよ…?それなのに、こんな…!!」
「ま、待って、みんな何か勘違いしてる!?オレにアブノーマルな趣味はないよ!?ちょっと、零からもなにか――!」
『あは、あははっ』
心の底から安心したように、ぼろぼろと涙をこぼしながら笑う零に。百も、つられて笑ったのだった。
――そのあと。
ちゃんと事情を話して、どちらにせよたっぷり朝までお説教をくらった事は、無論、言うまでもない。