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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第21章 もう一度ここから




『……今、手錠外すからね!』


放り投げられた手錠の鍵を拾い上げ、零はまだ震えている手指で手錠の鍵を開けた。解放された百の両手首は、手錠をされたまま暴れたせいか、痛々しい痣が刻み込まれていた。

百は何も話そうとしないまま静かに立ち上がり、近くに置いてあった毛布を拾い上げると、下着姿の零にぶっきらぼうにばさり、と掛けた。


『……百……よかっ――』

「……っ、ふざけんなよ!!」



瞬間、百の怒声と共に、ドンッと轟音が部屋に木霊した。

真っ白な壁にめりこむように、百の拳から鮮血が溢れた。



「……どうして……なんで、あんなことができたんだよ!?…ふざけんなよ…自分はどうなってもいいって?よくそんな鬼畜なことが言えたね……?零に何かあったら、オレは、オレは―――!」


瞬間。
ぱちん、と乾いた音が部屋に響いた。
頬を叩かれたのだと気付いて、思わず目を見開く百に、零は大きな声で叫んだ。



『バッッッカじゃないの!?ベランダから飛び降りる!?よくそんな頭のおかしい事が言えたよね!?私だってね、百に何かあったらって…考えるだけで気がおかしくなりそうだったんだよ!?居ても立っても居られなかったんだよ!?百を失うなんて、考えられないの!!百がいない人生なら……っ、そんなもの、いらないんだよ!!』

「―――…っ」

『何があっても側にいるんでしょ!?もう勝手なことしないって約束したのに!!百のバカ!くそばか!大馬鹿野郎!!』


捲し立てるようにそう叫ぶ零に、百はぎゅっと唇を噛み締める。口内を血の味が浸食していく。そして肩を震わせながら、弱々しく口を開いた。


「……零…なんで……なんでそんなこと言うんだよ……。…期待させないでよ。これ以上、オレを惨めにしないでよ……!」

『惨めだって、かっこ悪くたって、なんだっていいよ…!世界中が惨めだとあなたを笑っても、私は笑わない。…どんな百も、私にとっては世界で一番かっこいい。世界で一番イケメンで、ジェントルマンで。私のヒーローだよ』


零は言いながら、百の瞳をまっすぐ見つめた。
百の見開かれた大きな瞳からは、ぼろぼろと涙が零れ落ちてきて。

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