第21章 もう一度ここから
男が零の腕を引き、玄関の中へと引き摺りこんだ。
『きゃあ…っ!?』
「……零……っ!!止めろ!!手え出すな!!頼むから……零だけは見逃して……!了さんからいくら貰ってる!?倍払う!一億でも、十億でも!一生かかってもオレが払う…!!っ、わかった、このまま自分の足でベランダから飛ぶ!それで終わりにして!頼むよ……!お願い、お願いします、お願いします……!!」
『………』
捲し立てるようにそう必死に叫ぶ百。
百を取り押さえているのは、大柄で柄の悪い男二人だ。部屋には他に、同じような図体の男が二人いる。
零は小さく息を吸って、吐いた。そして、口を開いた。
『…私が何でもします。だから、百には何もしないでください。今此処で、なんだってしてみせます。あなたたちにとっても、了さんにとっても、その方が価値はあると思いますけど』
零の言葉に、百は大きく目を見開く。
「……零…おまえ、何言っ――」
「マジかよ?天下のCM女王が何でもするってよ!こりゃ一世一代の大スクープだぜ!?ははは!」
唖然とする百の横で、男たちの薄汚い笑い声が木霊する。
「おまえ、自分で言ってる事わかってるのか?天下のアイドル折原零ちゃんよお」
『ちゃんと理解した上で、言ってるんです。了さんにもそう交渉してください』
「……ははは、それなら本気かどうか試させろ。…そうだな、試しに今ここで、服脱いでみろよ!」
『……わかりました』
静かにそう答えた知夏が、羽織っていた上着を脱ぎ始める。
「…零、おい、何やってんだよ……ふざけんなよ…っ、おまえ――」
「おまえは黙って見てろ!!」
百を取り押さえていた二人が、再び百に手錠をかけると、その口を思いきり塞いだ。
「んん……っ!!」
「ほら、早く脱いでみせろよ」
『………』
上着を脱いで、着ていたトレーナーに手をかける。ばっと脱ぎ捨てれば、下着が露わになった。こちらを見ている百は、必死に止めようと暴れていて、大きく見開かれ真っ赤になった瞳から、ぼろぼろと大粒の涙を流していた。