第21章 もう一度ここから
『………っ』
零は迷いながらも、まだ持っていた合鍵で玄関の鍵をガチャ、と開けた。
瞬間、むせ返るような酒の匂いが、鼻中を刺激する。
『……っ、百…!?』
「零じゃーん!どうしたの、急に?」
名前を呼べば、慌てた様子の百が玄関から顔を出した。
『……よかった……無事だったんだ……ていうか、お酒臭っ…酔ってるの?千ちゃんが、百がトウマくんと会いにいったっきり連絡つかないって、心配してたんだよ!?』
「ああ、ごめんごめん!トウマと会った後飲み会になってさ。部屋で寝ちゃってたんだ」
『飲み会って……トウマくんはさっき生放送番組に出てたよ?』
「あ、ああ、飲んだのは、トウマじゃなくて、その後会った友達!眠たくって目があかないから、用があるなら明日にしてくれる?わざわざ来てくれたのに、ごめんね!」
『……誰と?』
「え?」
『だから、誰と飲んでたの?』
「…別に、誰でも良くない?零には関係ないでしょ?じゃあ、もっかい寝るから」
『待って、誰?言って。私に言えないような人?』
真剣にそう聞く零に、百はきゅっと唇を噛み締めてから続けた。
「……あのさ、零。オレ達、もう終わったじゃん。…何でおまえにそんなこと聞かれなくちゃならないの?」
苦笑しながら冷たくそう言う百に、零は驚いたように目を見開いてから、すぐにキッと百を睨みつけた。
『……いつもの百は、絶対そんなこと言わない。絶対何か隠してる』
「……何も隠してないって!眠くて機嫌が悪いだけだよ!零だって眠い時に起こされたら、機嫌悪くなるだろ?」
『嘘!絶対何か隠してる!!もう二度と嘘は吐かないって約束したのに!!』
「…っ、だから隠してなんかないって言ってんだろ!?あのさ、疲れてるんだ!あんまゴネると、引っ叩いちゃうよ!?」
『……百が?私を?やれるものならやってみなよ!!ほら、早く!!叩いてみなよ!!』
「………っ!!」
『ほら、やっぱりできないじゃん!!どいて!!』
「駄目だって!絶対駄目!!お願いだから帰って!ね、零お願い!!なんでもする!!い、今部屋に女の子来てるんだよ、だから今は――」
「―――そこまでだ」