第21章 もう一度ここから
「…っ、おい、この女、エントランスの鍵を開けて自動ドアをくぐったみたいだぞ」
「ほら、言ったじゃんか……!どうしよ、やばい、一瞬で酔いが醒めた。エレベーター壊れろ壊れろ壊れろ」
「おい、了さんに連絡しろ……、まだつながらねえのか!?」
「……っ、手錠を外せ!玄関先で追い返す。絶対約束する。その代わり、零には手を手を出すな。オレはどうなったっていい」
「信じられるか!こうなったら、あの女も一緒に……」
「バカか!!オレらが一緒にベランダからダイブすればさすがに大事件になる!後ろに手が回るのはあんたらだぞ!了さんにとっては、あんたらはトカゲの尻尾でしかないんだからな!!」
「………」
―――もし、了さんがこの事を知ったら。
オレの目の前で、零を地上にぶん投げろなんて言いかねない。
了さんに連絡をつける前に、なんとか零を追い返さないと、こいつらがどんな無茶をするか――。
零のことだけは―――死んだってなんだって、絶対に、絶対に守る。
瞬間。
ガチャ、と扉の鍵を回す音がした。
「…っおい、来たぞ!」
「手錠を外せ!!引っ叩いてでも零を追い返す!!……っ、さっさとしろ……!!」
百の叫びに、男達は顔を見合わせると、パリンと音を立てて酒の瓶を割った。
「…わかった。妙なことをしたら、この割れたボトルで零の顔を潰すからな!」
「………」
そんな事を言ってのけた男達を、百は思い切り睨みつける。けれど、今はそれどころではなかった。
外された手錠を確認した瞬間、玄関に向かって思い切り走った。