第20章 掻き混ぜ零れゆく
「双子のことは、モモに邪魔されたくないからね。MOPの翌日にはメディアに流出させる。二度とおまえに邪魔はさせない。君たち、彼に手錠をかけて」
了の言葉に、男たちは押さえつけていた百の両手首に手錠をかけた。
「………」
「さて、どうしようか。海外に売り飛ばずにしても、おまえは顔が売れすぎてるからな。いっそ、顔を切り刻んでから、骨粉コースにしてやろうかな。アイドルの末路としては最高だと思わない?」
「……。なんで、そこまでアイドルを嫌うんだ?」
「ゼロを見に行った事があるんだ。家族に言われて、仕方なくね。そんなに興味はなかったけど、みんながゼロを褒めちぎってたから、僕も少しだけ、期待して行った。客席から、ゼロに向かって手を振ったよ。ゼロ!ゼロ!僕はここだよ!だけど、ゼロは振り向かなかった。…がっかりしたよ。とてもね!こんな風にアイドルは、簡単に人の期待を裏切るんだ。モモ、おまえも」
「オレ……?」
「昔、最終形態になるまで酔いつぶれた時、介抱してあげてたら、モモはこう言ったんだよ。自分は五年で期限切れだから、その後は、アイドルではいられない。じゃあ、僕と何かしようよって言ったら、いいよって」
「………」
「なのに、モモはいつまでたってもRe:valeのままだった。おまえたちはくだらない嘘つきだ。だから、ZOOLを使って、世界中に教えてあげるんだよ。アイドルなんかに価値はない!ゼロも、Re:valeも、零も、ZOOLも、インチキな詐欺師だってね!」
「……。はは……。」
「何がおかしい?」
「ただの酸っぱい葡萄じゃんか」
首を傾げる了に、百は続けた。
「童話だよ。高い木の枝に実った葡萄を欲しがって、狐が何度も飛び上がる。だけど、葡萄には手が届かない。狐は負け惜しみでこう言うんだ。あんな葡萄なんか、酸っぱくて、美味しくないに決まってる。手に入らなかったものが、いいものだったら、悔しいから、罵って、いらないふりをして、価値を下げた――本当は、それが欲しかったのに。」
「………」
「…ゼロに振り向いて、手を振って欲しかったなら、振り向いてもらえるまで会いに行けよ!もっと大きな声で、ゼロの名前を叫べよ!あんたはそれが出来なかった!自分が傷付くのが怖かったからだ!」
「……黙れ」