第20章 掻き混ぜ零れゆく
「お邪魔するよ。わあ!相変わらず散らかっているね!お片付けしてくれる大好きな零とはお別れしたみたいだから、仕方ないか!もしかして、まだ未練たらたらのまま、零が片付けに来てくれるのを待ってたりするのかい?」
百の部屋に入るなり、了が愉しげに言った。
そんな了にほくそ笑んでから、百は空笑いをしてみせる。
「…あはは、そんなわけないでしょー。いま自分で片付けるから、外で待っててくんない?」
「あはは。お構いなく。ちょうど、僕の友達も下についたみたいだ」
「了さん、先に言っておくけどさ、これでも芸能人だから、マンションは監視カメラ付きなんだよ。お行儀の悪い友達が、警察のお世話になったりしないように、注意してあげた方がいいかもね?」
「あはは、モモ。これでも芸能事務所の社長だからさ。このマンションの持ち主とは懇意なんだよ。芸能人が住む都内のマンションなんて、限られてるからね!ツクモのタレントも、違う物件に何人もお世話になってる。何度も何度も何度も。不都合なことをなかったことにしてもらったりとかね」
「……ははあ。ああ、そう」
瞬間、ガチャ、と音を立てて玄関の扉が開いた。
「ああ、友達がついたみたいだ!どうぞ、入って!」
了の言葉と共に入ってきたのは、数人の随分とガラの悪い図体の大きな男達だった。
「わあ……。いかつい友達がたくさん」
「さっそく、僕の友達にモモのボディチェックさせてもらってもいいかな?モモは油断ならないからね!」
「挨拶前にボディチェックしてくるお客さんって、モモちゃん初めて……。……っ、おい、返せ!」
いくら百と言えど、こんな大男たち数人に押さえつけられては、抵抗なんてできるわけもない。
「見-つけた!新しい手料理を披露してあげるよ。このスマホ、二台ともレンジでチンするね」
「チンする前に、ダーリンに帰ったよコールさせてくんない?うちのダーリン心配性でさ。オレと連絡が取れなくなったら、警察に通報しちゃうかも」
「あはは、モモ。警察が来たらモモが困るパターンにも出来るよ。そっちにしようか?」
「…あはは……参ったな…。了さん、今回マジだね」