第20章 掻き混ぜ零れゆく
「あはは。あんたのアイドルは根性がないなあ。軽くゆすっただけで喋ってくれたよ」
必死に反論しようとするトウマの言葉を瞬時に遮り庇ったのは、百だった。
意地悪く口の端をあげてみせる百に、了が目を見開いた。
「モモがトウマをゆすったのか?」
「そうだよ。悪巧みがあんただけの特権だと思った?こいつの青褪めた顔は気分が良かったな。トウマ、もう帰っていいよ」
「……そっ……!」
「用済みだっつってんの。早く帰れ」
百が視線で訴えるように、トウマに言った。
それに続いて、了も口の端をあげる。
「そうだね、モモ。この先は僕らで楽しもう。そうだ!たまにはモモの部屋に行こうかな。僕の友達も呼んでいいよね。お行儀はあんまり良くないけど」
「………」
「…り、…了さん、待っ……」
「トウマ。今日のことは誰にも話すなよ。これ以上、口が軽くなるようだったら……おまえの家族や、おまえの前のメンバーに、突然、不幸が襲うかもしれないからね」
「……っ……!」
了は吐き捨てるようにそう言って、黙り込むトウマを背に、百と共にそのバーを出て行った。