第20章 掻き混ぜ零れゆく
「……天と陸が双子だってことをバラす?」
とあるひと気のない静かなバーで、百の真剣な声が小さく響いた。
隣に座っていたトウマが、神妙な面持ちで頷く。
「そうだ。あいつらのことは、業界でも気付いてるヤツらは何人かいた。バレること自体は、大きな問題じゃない。問題はそのバラし方とタイミングだ。MOPの後にネタをバラ撒かれれば、出来レースやヤラセを疑われちまう。IDOLiSH7がブラホワでTRIGGERに勝ったことさえ、仕組まれたプロモーションだと思われる。いや…思わせるように、了さんがメディアを動かす」
「……。わかった。トウマ、知らせてくれてありがとう」
「……礼を言われる事じゃない」
俯くトウマに、百は優しく訊ねた。
「どうして教えてくれたの?」
「……。あいつらの家族は関係ないだろ。このままじゃ、家族が悪く言われちまう……」
「はは……。やっぱ、いい子だな、トウマ」
「が、ガキ扱いしないでくださいよ。………!」
瞬間。
顔をあげたトウマの顔色が、青褪めた。
「…どうした?」
おそるおそる、トウマの視線の先を辿るように振り返ってみれば。
「―――やあ、トウマ!楽しそうな話をしているね!」
其処にいたのは、月雲了だった。
「……り、了さん……」
「まさか内通者が出るとはねえ。それが、おまえだとは…。驚きだよ、トウマ!」
「…っ、お、俺は……!」
「席を詰めてくれる?僕も会議に混ぜてもらっていいかな?」
「ち、違う、これは――」