• テキストサイズ

スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第20章 掻き混ぜ零れゆく




「本当だよ。そういう人種は、軒並み言葉が通じないんだ。モモがいくら大事な言葉を投げかけても」

「………」

「自分のルールだけが正しくて、大事な友達の忠告さえ鬱陶しがる獣だ。何もかも失うまで、神様気取りで君臨する。厄介なのは、そいつが滅びる時に、周りまで巻き込んで滅んでいくことだ。ひとりで消し炭になればいいのに、隣人にまで火の粉を浴びせて焼野原にする。……万の顔の傷がそれだよ」

「……ユキさんは、悪い人じゃなかったよ。昔だって」

「悪い人だったよ。僕のせいで万が殴られても、悪いのは殴ったヤツだけだと思ってた。たとえ気まずさを覚えても、僕の尊厳を守るために見ないふりをした。時間がすぎて、傷痕が消えるのを待って……消えない傷ができるまで、わからなかった。気にしないあいつに甘えて、僕はごめんなさいも言わなかったんだよ」

「………」

「月雲が自滅するのはどうでもいい。自衛隊に囲まれた怪獣みたいに、無様にやっつけられてしまえばいいけれど。おまえや零が巻き添えになるのは絶対に嫌だ」

「……あはは、大丈夫だよ!オレ、高層ビルじゃないから!どしーんって倒れる前にひょいっと零を抱きかかえて避けるし!」

「スーパーマンみたいに?」

「そうそう!光線出して応戦するよ!オレはユキと、零のためなら……スーパーヒーローにだって、凶悪な怪獣にだって、なってみせるさ。」



笑顔でそう言った百の背中を、千は少し不安げに見送った。




/ 552ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp