第20章 掻き混ぜ零れゆく
ピロリン、とスマホの通知音が鳴った。
Re:valeの楽屋で、机の上に置いてある百のスマホをちらりと見やった千が口を開いた。
「モモ。ラビチャ鳴ってるよ。代わりに読む?」
「ユキ、オレの新しいパスワード知らないだろ?」
「知ってるよ。あなたのたんじょうび…でしょ?」
「え、なんで知ってるの!?」
あなたのたんじょうび―――零の、誕生日だ。
「ふふ、わかりやすすぎ。1111より、下手したら単純」
「マジ!?……あはは、ユキにはお見通しだったんだね」
「当たり前だろ。それで、零と話をする覚悟はできたの?」
「……うん。ちゃんと、受け入れる覚悟は出来たつもり。…フレンズデイの直後に聞いたらさ、オレ…泣いて縋っちゃいそうだったから。零、行かないでって。オレの側から離れないで、って。そんなみっともない姿、先輩として、零と天の兄貴分として、見せられないもん。でも、もう大丈夫!MOPで正々堂々戦うIDOLiSH7とTRIGGERの晴れ姿を零と一緒に見送って、そしたら……零と天の事も、心から背中を押してあげられるようになるから!このパスワードも、そろそろ変えなくちゃね。」
「……モモは何か、勘違いしてるね」
「え?何が?」
きょとん、と首を傾げる百に、千ははあ、とため息を吐いた。
零が百に話したい事は、多分、そういう話じゃないのに。そう言いたい気持ちを飲みこみ、千は続けた。
「まぁ、話をすればわかるよ。それで?ラビチャ、誰から?」
「?あ…うん、ZOOLのトウマから……。明日のMOPについて、急いで話がしたいことがあるって。ユキ、この後も仕事だったよね。オレ、会いに行ってみるよ。何かあったら連絡する」
「一人で大丈夫?」
「大丈夫!トウマはNO_MADの頃から、いい子だし。了さんに困ってんのかも知んないから。MOPの辞退の事も気になるし、話、聞きに行ってみる」
「わかった。僕も日付が変わる前には帰れる。心配だから、連絡を入れておいて」
「トウマはいい子だってば!もしも了さんの罠だったとしても、まあ、なんとかするよ」
「モモは人が良すぎるから心配なんだ。救いようのない人間はいるよ。昔の僕みたいに」
「……そんなこと……」