第19章 夜明けの譚詩曲
「やあ、準備はどうだい?」
了の愉しげな声に、チーフディレクターは慌てて口を開いた。
「月雲社長…!言われた通り、私のチームをこちらに集めました。例のゲストも控えさせています。この後、制作局長の方から、IDOLiSH7がこのスタジオに来るようにと、変更がかかるんですよね?」
「そうだ。僕もこちらで見学させてもらうよ。ショックを受ける、IDOLiSH7の顔が近くで見たいから」
そう言って、了はにやりと微笑む。
「―――さあ、喜劇の始まりだよ!」
実に愉しそうにそう言った了に、隣にいたトウマが気づいたように口を開いた。
「…了さん。なんで了さんは陸のラビチャを知らないんだ?あんた、百のラビチャを覗けんだろ。あいつは俺らにまで連絡先渡してきた。くわえて、陸は人懐っこい奴だ。陸がラビチャやってないならまだしも、やってるっつーなら、百と陸と繋がってないわけねえんだよ。」
「繋がってないよ。モモのラビチャを見れる僕が言うんだから間違いじゃない。前に繋がってたとしても、切ったんだろう。喧嘩した和泉三月みたいに。」
「和泉三月…そいつのこともそうだ。あいつのこと十龍之介と同じように、百のサロンの幹部扱いしてただろ。なのに、なんで、あいつには追い込みかけなかった?」
「モモとラビチャで絶好したからさ。モモはショックを受けて、他の友達にも絶縁宣言してたよ。実際、モモも和泉三月がスタジオで喧嘩してるのも一緒に見ただろう?」
「だから…!それが茶番だったら!?」
「え?」
「気づかれてんだよ!百に!あんたがラビチャ覗いてること!」
「―――…」
トウマの言葉に、了は驚いたように目を見開く。そんな了に、トウマは捲し立てるように続けた。
「だとしたら、IDOLiSH7とRe:valeたちのステージ換えを上にねだったのも罠だ!IDOLiSH7を陥れるために、メイン会場に手下を集めようとしたあんたを騙すための嘘だよ!あんたの仲間を集めたスタジオにはIDOLiSH7は来ない!来るのは、最初の予定通りの―――Re:valeと零だ!」
トウマの言葉と共に、後ろから了にとって聞き慣れた声が耳を掠めた。