第19章 夜明けの譚詩曲
「どうするんだよ?あんたの息がかかったやつはメイン会場に集めてるんだろ?」
「そっちがそういうつもりなら、スタッフの配置を変えさせるさ。僕の仲間たちを、IDOLiSH7のいるスタジオへ。」
向こうは先手を打ったつもりで、虎の待つ洞窟にIDOLiSH7を送り込んでしまおうという、了の魂胆だった。
「―――最高のドッキリになるよ!スタジオにいるIDOLiSH7は、思いがけないハプニングに対応しきれない。彼らがしくじれば、メイン会場にいるRe:valeも零もみーんな青ざめる。共倒れでグダグダの感動のフィナーレさ!」
「思いがけないハプニングって?」
「あはは、感動の再会ものだよ。チャリティイベントではよくある自然なサプライズだろう?その時間、IDOLiSH7は思い出の歌とやらを歌う時間なんだ。歌の直前に、感動の再会をさせてあげる。」
ここまで聞けば、ただのいい話だ。けれど。
「IDOLiSH7は一度、それをやろうとして暴力事件を起こした事があるんだよね!四葉環くん…。美味しいお酒を飲ませてあげるって言ったら、君のお父さん、二つ返事で喜んでたよ。しかも、酒乱の気があるらしい。どんな暴言が飛び出すかな。ふふふ、わくわくしちゃうね!お父さんに挑発されて、罵倒を浴びせて、暴れ回る未成年アイドル。チャリティのムードは台無し!メンバーは環くんを庇っても叱っても世間からバッシングを受ける。感動の再会を企画した番組側も叩かれる。フィナーレ間際では、失敗の空気は取り戻せない。番組自体が胡散臭くなったまま、終了ーー!あ、録画しておかなくっちゃ!あはは!あっははは!」
雲に覆われた薄暗い夜―――狂気にも似た叫びのような笑い声が、不気味に木霊したのだった。