第19章 夜明けの譚詩曲
ソファでいつまでも抱き合っている零と百をじとっとした目つきで見ている千に、百が慌てて口を開く。
「まさか!忘れてるわけないじゃんか!スパダリのイケメンジェントルマンをっ!!」
「まあ、いいよ。今回のは、なかなか良かったから。火曜22時の恋愛ドラマにランクアップだ。金属バットも必要なかったしね」
「うっそ!?やったー!零、オレたち、水曜深夜1時から火曜22時にランクアップしたよ!」
『あははっ、いつになったら、月9になれるの?』
「そうね。不器用な二人の想いが、本当の意味で叶ったら……かな」
千の言葉に、なんだよそれーなんて冗談めかしく交わす百に、零はぎゅっと抱きしめていた手を離して、百の顔を見上げた。
『ねえ、百…っ!』
「うん?」
『あの…フレンズデイが成功したら…。…聞いてほしいことがあるんだけど…』
瞬間、百の顔は顕著に青褪めていく。
「…え…?ちょっと待って。…何…零から話って…。…どうしよう、怖いんだけど…!」
『何、怖いって!?』
百の口から返ってきた予想外の返答に、零は眉を顰めた。
そんな二人に、千がフォローをいれるように口を開く。
「まあまあ。モモ、おまえもこけら落としの時、零に同じ思いをさせてたじゃないか」
「え?あ…。……じゃあ、零も、もしかしてあのとき何言われるか怖かった…?」
『当たり前じゃん!怖かったよ。話があるって言われて、すっごい考えた。なんだろう?って。それで、めちゃくちゃ考えた結果……』
「「結果?」」
『…ボーイズラブに行きついた……』
「はあ!?何それ!?」
意味がわからないといった顔の百と、必死にお腹を抑えながら笑いをこらえる千。
「…くくっ……君たち…本当に、面白すぎっ……」
笑い転げている千を背に、百は零に向き直って真剣な表情で口を開いた。
「…よくわかんないけど、わかった。オレもちゃんと、覚悟しておく。フレンズデイが失敗して、零の話ってなんだったんだろ~~なんて寝れない夜を過ごさないようにするためにも、絶対成功させなきゃ!サイコで下品な若社長に、格の違い、見せつけてやろう!」
三人の強い決意が、賑やかな部屋に力強く響いたのだった。