第19章 夜明けの譚詩曲
ミーティングを終え、IDORiSH7の皆が帰って静かになった部屋で、零がスマホと睨めっこしながらぽつり、と呟いた。
『ねえ、百。前のスマホのラビチャに送る文面、こんな感じでいい?』
少し距離をあけて隣に座っている百にラビチャの画面を見せれば、百がこくこくと頷く。
「うん、OK、ばっちり!これで、了さんは嘘のスタッフの配置を信じて仕掛けてくるはずだ」
それは了の企みの裏をかいた、賭けだった。
予感が確信に変わったのは、先日のNEXT Re:valeで、ZOOLが百に言った言葉だ。
―――”1111”
おそらく、了は百のラビチャを監視している。
これはそう踏んでの計画だった。百は了に監視されているであろう方のラビチャで、三月やi7のメンバーたちと縁を切ったふりをして了に不仲を確信させ、スタッフや零、千とも了を騙すための嘘のやりとりをしていたのだ。
『うまくいくといいけどね…。そういえば、新しい携帯の方のパスワードはちゃんと変えたの?』
「もちろん変えたよ!もう二度と、1111にはしないっ!!」
『ちゃんと複雑なのにした?まさか、0000とかじゃないでしょうね』
「ちょっと!!オレ、そこまで単純じゃないよ!?」
「…くくっ……、1111にしてた人がそれ言う?」
千の突っ込みに、百はむすっと頬を膨らませた。
「もうそんな単純なパスワードにはしません!!」
「へえ?でも、僕は新しいパスワード、なんとなくわかっちゃったけどね」
「嘘!?ほんとに!?」
慌てる百に、千がくすくすと笑う。
『それよりさ、言わなくてよかったの?i7の子たちに…。組織してること』
TRIGGERの監禁事件の日、三人で誓った組織のことだ。
あれ以来、三人は密かにリストを作り、信用できる人間たちと連絡を取り合っていたのだ。
「これ以上、危ないことに巻き込めないよ。このチームは協会や組合と勘違いされやすいから。そしたら、いろんな怪獣が潰しにやってくる」
『確かに、そうだね…』
「零、ユキ。二人とも、名簿、ちゃんと管理してくれてる?」
『うん!』
「してるよ」
「あはは、二人ともえらいなあ。昔はあんなに人見知りで、何人にアドレスもらっても、登録さえ面倒くさがってた零とユキがさ」