第18章 奏でるモノクローム
「………」
「僕より自信があるなら、好きにすればいい。どうした、色男。おまえの意見を聞いてあげてるんだよ」
若い頃、何人もの罪のない女の子をホワイトアウト(千に会って理性を忘れる、の意)させてきた千の魅力に、スタジオ中は虜になっていた。
「………っ。ちっ……。何を言ってるのかわからないな……」
「恥ずかしがらなくてもいいのに。かわいらしいね」
「なんだと?」
「零はかわいい妹なんだ。誰であろうと、簡単に手出しはさせないよ。ファンのみんなのためにもね」
完全に千の空気に飲み込まれた虎於が、小さく舌打ちをしてから、持っていたボールペンの先を千に向けた。
「……なら、質問だ。あんた、先端恐怖症なんだろ?こんなボールペンでも怖いのかよ?」
「……っ」
『……この』
瞬間、勢い余って立ち上がろうとした零の手を、百はぐいっと引いて座らせ、虎於からボールペンを取り上げると、そのボールペンを虎於の膝に向かって思い切り振り下ろした。
「……!?」
「ぎゃあああああ…っ」
トウマの叫びがスタジオに響いた。
スタッフが即座にCMをいれる。スタジオには一気に緊迫した空気が流れ始めた。
「……っ、びっくりした……」
「大丈夫か、トラ!?ボールペン、膝に…っ」
「刺さってない、刺さってない」
焦るトウマに、百が続く。
百は冷静な顔で虎於を見つめてから、ゆっくり口を開いた。
「オレの前で、零とユキを馬鹿にするのは許さない」
それは普段の百からは想像もできないほどの、冷たい瞳と声だった。
「………」
「それに、尖ったもの人に向けちゃだめでしょー。子供の頃教わらなかった?教わってないなら、モモちゃんが後でたっぷり教えてあげちゃう。で、どうしたい?」
「この……」
「すいませんつっとけ!この人、了さんの友達なんだぞ!?」
「そうですよ。何をされるのかわかりませんよ」
「オレは巻き込まれたくないからな!」
虎於を宥めるように、トウマと巳波、悠が続く。