第18章 奏でるモノクローム
「なに感動してんだ。丸めこまれんの早すぎだろ」
「トウマ、ダサい」
「百さんと零さんは、了さんのご友人だそうですね。了さんからよく聞いています」
トウマに突っ込む虎於と悠の横で、巳波が百と零に向かって言った。
百は一瞬顔を顰めてから、それをごまかすように笑いながら答える。
「どうせ悪い話でしょー。今日はよろしくね!みんなでハッピーにお仕事しよう!」
「ふん。適当にやってさっさと終わらせる」
「えー!もう終わっちゃうの!?って時間にしようよ。その方がみんな楽しいでしょ?」
「おまえの頭、お花畑だな」
百に憎まれ口を叩く悠の背後に、いつの間にか千が立っていて。
「あはは、そうそう!……って、ユキ!」
『千ちゃん!?』
もしや――と思ったのも束の間、千は悠の脇腹をくすぐってみせた。
「ひははは…っ」
「お口悪いでしょう」
冷静な顔でそう言う千に、百が慌てて続く。
「だめだって!まだ飴のターンだよ!」
『…いや、もう鞭のターンでいいんじゃない?』
「だよね。僕もそう思う」
「……その会話、なんか怖いんすけど…」
三人の会話に聞き耳を立てながら、トウマがおそるおそる呟く。そんなトウマの横で、虎於がふんと鼻をならした。
「怖いものか。あんたたち三人の弱点は了さんから聞いてきた」
虎於は言いながら腰をあげると、ゆっくりと零の方へと近づいていく。やがて目の前までくると、不思議そうに見上げている零の顎をくいっと持ち上げた。
「あんた、近くで見ると尚更いい女だな。胸は控えめだが」
それは、あまりにナチュラルな手際だった。顎を持ち上げられることなんて、普通に生きていればなかなかないだろう。けれど、この御堂虎於という男はそれを当たり前のように、ごく自然に、やってのけたのだ。
何が起きたのかわからないといった表情でぽかんとしていた零も、控えめな胸を指摘されたことで我に返ったようだ。
『なっ……!』