第18章 奏でるモノクローム
一通りプロフィールに目を通した頃には、収録の時間が迫ってきていた。
とうにプロフィールを読むのに飽きた千が寝かけている横で、じっと真剣に読み続ける零に後ろから声が掛かる。
「零、大丈夫?不安?」
振り向けば、そこには優しい表情でこちらを見下ろしている百が立っていて。
『百…。…んー、IDORiSH7の番組にZOOLが出たときのこととかもあって、少し不安だったけど、もう平気だよ。だって、二人と一緒だから』
「うん、そうだよ。オレとユキがいる。何があっても、オレたちが助けるし、守るからね。安心して、いつも通り楽しんでいこう!」
そういって、八重歯を出して笑う百。
百の言葉ひとつ、笑顔ひとつで、こんなにも元気になる。こんなにも頑張ろうって思える。本当に、百はすごいなあ、なんて、ここ最近改めて実感させられっぱなしだった。
『……うん。ありがとう、百』
そう言えば、百は笑顔のまま頷いてくるりと背を向けた。行こうとする百の腕を、零は気付けば無意識に掴んでいた。
「……零?」
『………』
「どうしたの?」
きょとん、とした表情で訊ねる百を見てから、零は慌てて手を離した。
――何やってんだろう、私。
手が伸びたのも、百の腕を掴んだのも、ほとんど無意識だった。
――ここ最近の自分は、どこかおかしい。
百に笑顔を向けてもらうだけで、優しい言葉をもらえるだけで、十分幸せなはずなのに。
前みたいに抱き締めてほしくて、頭を撫でてほしくて、触れてほしくて、どうしようもなくなってしまう。
自分はこんなに欲張りな人間だったっけ?なんて思って、恥ずかしくて、情けなくて、申し訳なくて、消えてしまいたくなる。