第18章 奏でるモノクローム
『わかる。私も、この人より楽と龍に抱かれたいもん』
零の口から出た言葉に、その場の空気が一瞬凍りついた。
『ね、天もそう思わない?』
そう言いながら隣を見やれば、視線だけで人を殺せそうな目つきで睨んでいる天と目が合った。
『……て、てん……?』
「………」
「龍。俺たち天に殺される前に避難した方がいんじゃねえか?」
「うん…俺もそう思う…」
ひそひそと話す楽と龍の言葉なんて、天と零の耳には入ってこない。
じーっと零を睨みながら、天は口を開いた。
「どうしてそう思うの?」
『え……だって、御堂さんより楽と龍の方がカッコイイし、色気あるし、優しいし……』
「かっこよくて色気があって優しかったらキミは抱かれるわけ?」
『いや、そういうわけじゃ……って、なんで怒ってるの!?』
「キミが節操のない発言するからでしょう」
『いや、本気で抱かれたいとかじゃなくて言葉のあやっていうか……ねえ!?』
助けを求めるように、零が楽と龍に視線をやれば。
楽が慌てて口を開いた。
「おう!わかるぜ。俺も女だったら、龍に抱かれたい」
『でしょう!?絶対そうだよね!』
「そ、そんな……。零ちゃんにそう言ってもらえるなんて…照れるな…」
「……龍。なんで赤くなってるの?」
「ひぇ!?ご、ごめん…!」
「おい、天。怒るなよ。あと3~4年もすれば、おまえにも色気でてくるって」
「フォローになってない」
一層不機嫌になった天に、零がきょとんとしながら訊ねた。
『天、色気が欲しいの?』
「……別に」
『色気なんてなくたって、天はすっごく魅力的だよ?天のカッコよさは、天にしか起こせない奇跡だもん』
零の言葉に、天は目を見開いてから、赤くなる顔をごまかすようにぷいっと零から視線を逸らした。