第18章 奏でるモノクローム
「「いただきます」」
嬉しそうにドーナツを頬張る楽と龍を見つめてから、ふと隣に視線を流せば、天が黒いドーナツを食べようとしていた瞬間だった。
「いただきま――」
『ちょっとだめ!!』
零が思わず天の腕を掴めば、天は不機嫌そうに眉を顰めた。
「なに?」
『何、その黒いの!?全部捨てたつもりだったのに…!それ、食べちゃだめ!失敗作!』
「手、離して。ボクはこれがいいの」
『何言ってんの!もっと美味しそうなの他にいっぱいあるでしょ?』
「だって色の綺麗なやつは、和泉三月が作ったやつなんでしょう?ボクはキミが作ったやつが食べたいの」
『なっ……!』
零は自身の顔が熱くなるのを感じて、ぱっと天の腕を離す。天はしめたと言わんばかりににやりと口の端をあげてから、黒いドーナツにぱくっと噛み付いた。
『あ…!』
「うん、美味しい」
『……うそつき』
「嘘なんてついてどうするの」
『だって、焦げてるし形汚いし、美味しいわけないもん…』
「零が作ったんだから。美味しくないわけないでしょう」
天はそういって嬉しそうに微笑んでから、ドーナツをぱくぱくと食べていく。
―――天は、昔から、そうだった。
どんなに焦げてても、どんなにまずくても。美味しいねって、笑顔で言ってくれるんだ。
『………』
「ありがとう。また作ってよ」
『……上達、したらね』
「しなくても。……ほら、楽と龍も喜んでるし」
「めちゃくちゃ美味い!もう一つくれ!」
「お店屋さんのみたいだ!俺ももう一つください!」
興奮しながらドーナツをせがむ二人に、思わず笑みが零れてしまう。
『……ありがと、三人とも』
「もうあげないよ。一つずつって言ったでしょう」
ぎゃあぎゃあと言い合う三人に笑いながら、ふと流れていたテレビに視線を移す。そこには、今まで龍が出ていたCMにZOOLの御堂虎於が出ていた。彼はいま、楽と龍がずっと首位を独占していた抱かれたい男ランキング一位にも輝いているのだとか。
『………』
「人気だよな、ZOOL。曲がいいのは認めるぜ。でも、抱かれたい男ランキング一位ってのは、納得できないな。龍のが絶対、いい男だろ」
楽の言葉に、零がうんうんと頷く。