第18章 奏でるモノクローム
天に手を引かれたまま部屋のなかに入れば、楽と龍が嬉しそうに出迎えてくれた。
「おお!マジで来てくれたのか!」
「零ちゃん、いらっしゃい!来てくれてありがとう」
「……はしゃぎすぎ」
楽と龍に冷たい言葉を放ってから、天はそっと零の手を離した。
『お邪魔しまーす!綺麗な部屋だね!どう?三人暮らしは?』
「「最悪」」
楽と天の言葉が見事に被る。
「エアコンや風呂の温度設定だけでも、議論が絶えないんだ。にぎやかで実家にいるみたいだよ」
龍が和やかにいえば、楽と天が続く。
「こいつ、換気扇の強度、よわ・ちゅう・つよって言うんだぜ」
「楽の方が紛らわしい。お風呂、追い炊きしとけじゃなくて風呂燃しとけって」
ばちばちと火花を飛ばしながら言い争う楽と天に、ぷっと吹き出す零。
「ね?賑やかだろ?」
『うん、すごく楽しそう』
「「楽しくない」」
息のぴったりな楽と天に笑ってから、零は手に持っていた紙袋を差し出した。
『あ、これ、大したものじゃないんだけど。よかったらみんなで食べて』
「え、いいんですか!?この前もあんなに差し入れもらったばかりなのに…」
「悪いな、いつもいつも…。ありがとな」
『ううん、全然!…で、こっちは天。はい』
もう片方の手に持っていた紙袋を差し出せば、天は目を見開いた。
「……本当に作ってくれたの?」
『むしろ昨日の冗談だったの!?』
「……冗談じゃないけど…」
白い頬をほんのり桃色に染めながら、天は紙袋をそっと受け取る。そんな天の様子を、龍と楽がじーっと見つめていた。