第18章 奏でるモノクローム
ピンポーン、と龍の家のチャイムを鳴らせば、すぐにドアが開いた。玄関で出迎えてくれた人物に一瞬驚いてから、思わず声を上げた。
『…天っ!?』
「いらっしゃい」
ドアを開けてくれたのは龍ではなく天で、本当にあの三人が一緒に住んでるんだなぁ、なんて改めて実感して、なんだか少しおかしくて笑えてきてしまう。
「何にやけてるの」
『……いや、なんでもない!お邪魔します』
部屋に入ろうとすれば、天の手がそっと顔に伸びてきて。
『っ!?』
「……熱はないみたいだね」
気付けば天の女の子みたいに華奢な手のひらが、おでこに当てられていた。その手はひんやりと冷たくて、なんだか少し気持ち良い。
『熱なんてないよっ!?』
「風邪、引いてない?」
『引いてないよ…?なんで?』
零の問いに、天ははあ、とため息を吐いてから、おでこに当てていた手で小さくデコピンをしてみせた。
『痛っ!!』
「……雨の日に傘もささないで外に出るなんて、アイドル失格。体調管理も仕事のうちでしょう」
天の言葉に、零は大きく目を見開く。
『え……?』
「……でも。……ありがとう。すごく嬉しかった」
「……嘘……雨の日ってまさかライブの時!?気付いてたの!?」
「当たり前でしょう。あんまりボクを見くびらないで」
「だって…夜だったし人もいっぱいいたし雨も降ってたのに…」
「どこにいたって見つけるよ。キミを見付けるのは、小さい頃からのボクの得意技だからね」
天はそういって優しく微笑むと、ぽかんと口を開けている零の手を引いた。
「早く入って。楽と龍も待ってる」
『…あ……うん…っ!』