第18章 奏でるモノクローム
「……あ……うん…っ」
「大丈夫ですよ、二人の関係は誰にも言いませんから!百さんの家に泊まったことのある、オレと一織だけの秘密です」
「…あははっ……ありがとー、三月。……うん、めちゃくちゃ美味しかったよ!」
「よかったー!手伝った甲斐がありました!それじゃあ、また後で!」
「うん!また後で、よろしくね!」
笑顔で三月の背中を見送ってから、小さく息を吐いた。咄嗟に苦手な嘘なんてついてしまったけれど、バレていないだろうか。三月や零が傷つく事にだけは、ならなければいいけれど。
一生懸命天のために徹夜でドーナツを作る零の姿を思い浮かべて、思わず笑みが零れるのと同時に、胸がきゅっと締め付けられた。
「……バンさん、ごめんなさい…。やっぱりオレには……素直に気持ちを伝えるなんて、できそうにないです」
――だって、そんなことをしたら。
きっと、また――零を困らせてしまうだけだから。
小さく呟いた独り言は、静かな廊下にぽつりと浮かんでそっと消えた。