第18章 奏でるモノクローム
「あ、零ちゃん帰ってたのか!おかえ――」
『おかえりみんな!!…三月くん!!お願いがあります!!』
どたばたと駆けてくるなり三月の両肩を掴む零に、三月はぽかん、と口を開けながら唖然としている。
「おいおい、なんでお兄さんじゃなくてミツなんだよ。頼みごとならこのお兄さんが――」
「零りん、零りん!オレたち、今日、てんてんたちの所、行ってきた!!」
「こらこら、環くん…」
大和の言葉にすかさず割り込んでくる環を制する壮五。
そんな三人を横目に、ゴホン、と三月は咳払いをしてから、零の両肩にぽん、と両手を置いてみせた。
「悪いなー、おまえら!零ちゃんが用あるのはオレみたいだからさ、今日はオレが零ちゃんを独り占めさせてもらうわ!」
「おい、ずりぃぞミツ!」
「あー!みっきーずっりぃ!」
「三月さん…羨ましい……」
次々ととんでくるブーイングを背に、三月は零の肩を組み、耳元でこっそり囁いた。
「で、どうしたよ?オレに頼みって」
『あの、ね…。もし、よかったらなんだけど……』
「おうっ!」
『……ドーナツの作り方、教えてほしいなぁって』
頬を赤らめながらそう言う零に、三月は大きく目を見開いてから、全てを察したようににやりと笑った。
「ケーキ屋の息子に任せなさい!!」
『ありがとう…っ!!』
何度もお礼を言いながら必死にドーナツ作りに取り掛かる零を見つめながら、三月はぼそりと呟いた。
「百さん、羨ましいなぁ……」
『え?』
「ううん、なんでもない。よし、やりますか!」