第18章 奏でるモノクローム
「………っ」
「俺も、ずっと側で見てきたからこそわかるんだ。……きっと、百くんもたくさん考えたんだよね。二人の間には、俺や千にはわからない、百くんと零ちゃんにしかわからないことがあるんだと思う。だから…あくまで客観的な意見として聞いてほしいんだけど……」
大きな瞳を潤ませている百から視線を反らすようにして、万理が苦々しく口を開く。
「……見ていてじれったい」
「それ」
ここにきて初めて意見の一致した万理と千は、息を合わせたかのようにグラスを交えた。
「純粋すぎて、たまに苛々するよね」
「ああ、それわかる。なんでそうなっちゃうの?なんで??って思わず突っ込みたくなる」
「そうそう。突っ込みどころありすぎて、もう突っ込むのも面倒くさいよね」
盛大に愚痴りだす万理と千に、つい今の今まで溢れてきそうだった涙が音を立てて引っ込んだ気がした。百はぽかん、としてから、思わず間抜けな声を出した。
「え……ええっ!?」
「ほら、そういうところ」
「恋愛のれの字さえかじっていない中学生みたいだよね」
くすくす笑いながらからかう万理と千に、百はむすっと頬を膨らませる。
「っ恋愛経験豊富な二人とは違って、オレは初心なんです…っ!!」
「こいつは別だけど、俺は経験豊富な方じゃないよ」
「嘘つくなよ。万に比べたらモモなんて童貞だよ」
「ユキっ、オレは童貞じゃな――」
「実質童貞みたいなものだろ」
「……。否定はしないけど……」
しゅん、と落ち込む百の背中を万理がぽんぽんと優しく叩いた。