第18章 奏でるモノクローム
「えっ…!バンさんの隣なんて…!い、いいんですか!?」
「当たり前じゃないか。友達になろう、ってこの前言ったろ?」
「何、その話。僕知らないんだけど」
すかさず入ってくる千を無視して、万理は続ける。
「用事っていうのは嘘だよ。三人で話して欲しかったんだって。男だけで話す場所も必要ですから、って。必死な顔で言ってた。でも、それだけじゃないと思う。…百くんなら、わかる?」
「………」
「零がいたって変わらないよ。なんで無理にでも連れてこなかったの?」
「千…おまえは本当に空気が読めないな……」
「……変な話だよね。空気って読まなくちゃならないもの?」
居直った口調でむすっと膨れる千の横で、百はグラスをぎゅっと握りながら口を開いた。
「……オレに会いたくない……とか?」
「本当にそう思う?」
「え……?」
顔をあげた百に、万理は優しく微笑んだ。
「逆じゃないかな。俺からしてみれば、百くんに会いたくてたまらないって顔してた」
「………」
「俺さ、ずっと、百くんに言いたいことがあったんだ」
言いながら、万理は百の瞳をまっすぐ見つめる。
「―――ずっと、君にありがとうを言いたかった」
「え……?」
「千を、零ちゃんを、救ってくれてありがとう。……君は、俺のヒーローだ。暗い闇の中で道に迷っていた二人に、手を伸ばしてくれた。ここまで連れてきてくれた。それは他の誰にもできない、百くんにしかできなかったことだよ」
「……バンさん……っ、オレは、そんな…っ」
「万の言う通りだ。モモだからRe:valeは売れたんだ。モモが相方だったから、僕は今ここにいる。たった五年でトップアイドルになって、仕事仲間からの信頼を築き上げた。Re:valeを愛し続けた気持ちは、多分、僕も万も、モモにはかなわない」
「……ユキ……っ」
「零もそう。零を笑顔にできるのは、僕でも、万でも、きっと……天くんでもない。モモだけだよ」
千の言葉に、百は俯いた。
グラスを握る手は微かに震えていて。
「……どうして、わかるの…?」
「言っただろう。ずっと君たちを、一番近くで見てきたからだ」
千の言葉に、百はゆっくりと顔をあげる。
そこには優しく微笑んでいる万理と千がいて。