第18章 奏でるモノクローム
「……モモ、零のこと、気にしてるんだろ」
「……え!?」
千の言葉に、百が驚いたように目を見開いた。そんな百に畳み掛けるように千が続く。
「僕の位置からだと、画面丸見えだよ。零とのラビチャをじーっと見つめて、文字打っては消してってさっきから意味のわからない、無駄なことを繰り返してる」
「……っ!!」
「おい、千。言い方」
百の顔がみるみるうちに赤くなって、彼はそれをごまかすように店員に向かって口を開いた。
「…お、親父さん!ウイスキー、ロックで!!」
「焼酎で」
「僕はワインで。もっといいやつない?」
ウイスキーのロックをぐびぐびと飲み始める百を見ながら、万理が訊ねる。
「……零ちゃんのこと、気になる?」
「ゴホッ……っ、…ゴホっ」
「用事ってなんなんだろう、って?」
「……それは…」
万理の問いに、百はロックグラスを両手で包んだまま口を噤んだ。そんな百の代わりに、千が口を開く。
「ところで、零が僕たちより優先する用事って何?」
「……何、その台詞。おまえは零ちゃんのなんなんだよ…」
「何って。家族…みたいなもの?モモにも、零にも、養子縁組をしてくれって頼んだら断られたから。正式な家族ではないけどさ」
「相変わらず考えることが常人の上の上を行くよな」
「どうもありがとう、万」
「いや、褒めてないんだけど」
千に軽蔑の視線を送ってから、万理は静かに席を立った。
「百くん、隣いい?」