第18章 奏でるモノクローム
――「すごいじゃないか、零ちゃん!人気アイドルのMVに出れるなんて、こんなチャンスは滅多にないよ!」
――『…でも……私にできますかね……演技とか、やったことないし……なんか、いかにも自分とは真逆で合わなそうな人たちでした……。髪型とかもすごい派手で、いかにもチャラそうな……』
――「え、そうなの…?そんな人たちと関わるのはちょっと心配だな…。なんて名前のユニット?今、人気上昇中なんだろ?」
――『えっと、確か―――”Re:vale”?』
その瞬間、思わず目を見開いた。
運命なんて不確かなものは信じてなかったけど、その時、確かに感じたんだ。
驚きや歓び、感動とでわけがわからなくなって、なんでか泣きそうになったのをよく覚えてる。
――「…はは……っ。…零ちゃん、大丈夫、安心して。Re:valeは最高のアイドルだよ」
――『そうなんですか?まだ曲とか聞いたことなくて』
――「俺が保証する。……俺はね、Re:valeの大ファンなんだ」
それから、彼女はみるみるうちに変わっていった。
変わったというよりも、本来の彼女に戻ったのだろう。驚くほどよく笑うようになって、徐々にだけれど他人にも心を開くようになっていった。
あんなに引きこもって練習ばかりしていた彼女が、百くんの作った運動部とやらに入って(無理矢理引きずり込まれたらしく当時は愚痴ばかり言っていたけど)、色々な人達の集まった輪の中でスポーツなんてするようになって。
それ以来、彼女の笑顔が絶える日はなかった。
彼女を変えてくれたのは、百くんだということはわかっていた。彼女が百くんの話をする時は、本当に楽しそうだったから。
いつか、彼らの前に姿を現せる日がきたら――ちゃんとお礼を言おう、と。その時から決めていた。
俺の大切な二人を、暗闇から助け出してくれた――百くんに。
それが、今日だった。
なのに。
君はどうして、無理して笑ってるの?