第18章 奏でるモノクローム
『……あはは……っ。…そうなんですよ。なんか、やっぱり付き合ったりとか、自分たちには違うのかなって!だから、友達に戻ったんです!』
「………」
そういって笑う彼女の笑顔は、無理をしているのが見て取れるようだった。
聞きたいことはいくつもあるけれど、これ以上聞くのはあまり良くない気がして万理は思わず口を噤む。
―――彼女は、昔から素直な子だった。
思ったことはすぐに口に出すし、苦手なものは苦手ではっきりしていて、おまけにすぐに顔に出る。人見知りだし照れ屋だけれど、何事にも一生懸命で大切な人のためなら努力や我慢も惜しまない。そういうところがたまにトラブルの種になったりするのだけれど(この前のTRIGGER救出作戦の時みたいに)。基本的には自分に素直で正直で、心を開いた人間の前では、いつも楽しそうに笑っている、そんな女の子だ。
けれど、最初からそうだったわけじゃない
15で親元を離れ小鳥遊プロに入った彼女は、一人ぼっちで朝早く練習場に来て、夜遅くまで練習していた。なんと声をかけても”大丈夫です”、”まだやれます”、それしか言わない。オフの日だって、同じように朝から夜まで一人ぼっちで練習していた。
練習生は他にもちらほらいたけれど、彼女だけはどこか異質めいていて、やっぱり浮いていた。社長や俺が輪の中に溶け込めるように進めても、やっぱりダメで。社長曰く、親元を離れる前までは、よく笑う子だったらしい。そんな面影は一つも感じられなかった。
彼女はいつも、長い睫毛を伏せて、下を向いていた。
そんな彼女に、デビューの話が舞い込んできた頃だった。
ある日社長と一緒にテレビ局に挨拶回りに出掛けた時、話題の人気上昇中のアイドルのMVに出てくれないかと誘いを受けた、と緊張した面持ちで帰ってきた。