第17章 雨と月と輪舞曲を
「――こんばんは。TRIGGERです。今夜はありがとう。ボクたちの新曲、聞いてください」
ここが路上のステージだということも、雨が降っているということも、微塵も感じさせない。そこには、ステージで輝くTRIGGERがいた。
変わらぬ笑顔で、変わらぬ声で。夢の続きを――三人は歌い続けていた。
「―――…っ、ありがとうございます。TRIGGERで、"In the meantime"でした」
『………天……』
―――ずっと、考えていた。
彼は今、何を思うのだろう。
TRIGGERの九条天は今、何を思うのだろう。
けれど、想像してはいけないことのような気がして、すぐに考えるのを止めた。
だって、悔しさだとか、悲しさだとか、不甲斐なさだとか。そんな言葉は、天の名前には似合わないから。
アンコールの声が街中を埋め尽くす。いつの間にか、ステージの周りには大勢の人だかりができていて。
「――ごめんな。人が集まってきたから、今夜はこれでお別れだ。だけど、必ず会いに来る」
「――心配かけてごめんね…。ずっと、みんなに伝えたかった。不安にさせてごめん。俺たちを応援してくれてたのに…。笑顔にさせてあげられなくてごめん」
楽と龍の後に、天が続く。
「――これからも、ボクらは変わらず歌い続けます。今夜は……。………。……っ、……、今夜は、ありがとう………」
―――天が、泣いている。
こんなに付き合いの長い私でも、天の泣くところなんて初めて見たんだ。
泣いている天が、ファンのみんなに笑いかける。
優しくて、温かい眼差しは、子供の頃と同じ――大好きな瞳。