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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第17章 雨と月と輪舞曲を





「――こんばんは。TRIGGERです。今夜はありがとう。ボクたちの新曲、聞いてください」



ここが路上のステージだということも、雨が降っているということも、微塵も感じさせない。そこには、ステージで輝くTRIGGERがいた。

変わらぬ笑顔で、変わらぬ声で。夢の続きを――三人は歌い続けていた。



「―――…っ、ありがとうございます。TRIGGERで、"In the meantime"でした」



『………天……』


―――ずっと、考えていた。


彼は今、何を思うのだろう。

TRIGGERの九条天は今、何を思うのだろう。

けれど、想像してはいけないことのような気がして、すぐに考えるのを止めた。

だって、悔しさだとか、悲しさだとか、不甲斐なさだとか。そんな言葉は、天の名前には似合わないから。



アンコールの声が街中を埋め尽くす。いつの間にか、ステージの周りには大勢の人だかりができていて。


「――ごめんな。人が集まってきたから、今夜はこれでお別れだ。だけど、必ず会いに来る」

「――心配かけてごめんね…。ずっと、みんなに伝えたかった。不安にさせてごめん。俺たちを応援してくれてたのに…。笑顔にさせてあげられなくてごめん」


楽と龍の後に、天が続く。


「――これからも、ボクらは変わらず歌い続けます。今夜は……。………。……っ、……、今夜は、ありがとう………」





―――天が、泣いている。


こんなに付き合いの長い私でも、天の泣くところなんて初めて見たんだ。


泣いている天が、ファンのみんなに笑いかける。

優しくて、温かい眼差しは、子供の頃と同じ――大好きな瞳。

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