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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第17章 雨と月と輪舞曲を







―――その日の雨は、突然やってきた。



先程までの爽やかな秋空が嘘のように、陽の暮れた街中を銀の糸が包み込む。



『………雨…』


零がぽつりと呟けば、ワイパーが車を軋ませる音が車内に響いた。
窓ガラスにはぽつぽつと雨粒がつき、重くなった水玉がゆっくりと下に垂れていく。


「夕立かな。今夜は冷えそうだね」


万理の声に耳を傾けていれば、ふと、街中にできている小さな人だかりを視界の端に捉えた。


『………』


路上ライブか何かだろうか。そんなことを考えながら、ぼけっと街を見つめていれば、小さな仮設ステージの上に立つ見慣れた姿に思わず目を見開いた。


『………嘘……っ、万理さん、車停めてください!!』

「え!?」

『お願いします…!!TRIGGERが…TRIGGERがいるんです!!』


零の必死な訴えに、万理は慌てて車を停める。


『……っ』


車が停まった瞬間、零は帽子を深く被り直して、傘も持たずに飛び出した。


「あっ…、ちょっと零ちゃん!?」


遠くなっていく万理の声を背に、雨の中、ステージへと夢中で駆けた。
雨は容赦なく肌に当たり、ぱしゃぱしゃと音を立てて跳ね返る。体の芯まで冷えてしまいそうな雨のなか、ステージの上に、TRIGGERはいた。


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