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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第17章 雨と月と輪舞曲を





「さあ、天。ここにサインをして」


契約書を手に、九条が天に言った。


「僕と君との契約書だ。これからは、僕が直接君のマネージメントをしていくよ。ゼロのようにね」


そう言う九条に、天は真剣な眼差しを向けながら口を開く。


「……九条さん」

「なんだい」

「TRIGGERを抜けるつもりはありません」

「……TRIGGERなんてもう存在しないよ」

「存在してます。ボクと楽と龍がいる限り」

「あんな二流と組む必要はない」

「ボクは彼らを二流だとは思いません」

「…レッスンし直しだな、天。いつからそんなに採点が甘くなったんだ?」

「九条さん……。お願いです」

「君は僕とやるんだ!そう約束したじゃないか!」


急に声を張り上げる九条に、天は目を見開いた。
九条は捲し立てるように続ける。


「約束を破るのか!?ゼロのように僕を置いていく気だな!?そうやって、どこかに行ってしまうんだ!!僕から逃げないように、養子にまでしたのに、あんまりだ!ひどいじゃないか!ひどいよ、天……!!うう……っ、ううぅーっ……」


泣きだす九条を落ち着かせるように、天は背中を撫でながら口を開いた。


「九条さん、違います!誤解です。こう考えてください。ボクがTRIGGERを抜けないことは、ゼロのように、無責任に消えないという証明です」

「…証明…?」

「TRIGGERを捨てるボクは、いつか、あなたを捨てるかもしれない。そうじゃないことを、九条さんに証明したいんです」

「………」

「いなくなったりしません。あなたの夢を必ず叶えます。安心してください、九条さん……」

「……そうだった。天はそういう子だったね。だから、キミを選んだのに忘れていた…。大声をあげてごめんね」

「いいえ。こちらこそ、不安にさせてすみません」


なんとか落ち着きを取り戻した九条に、天は続ける。


「…約束します。たとえ、弟が、TRIGGERのメンバーが、九条さんが、……零が。死にかけているときでも……ボクはステージに立ちます。どんな事情があっても…絶対に、ステージを捨てません。…”終わらないアイドル”に――ボクは必ずなってみせます」



―――九条さんの夢は、ボクが終わらせなきゃいけないんだ。

次の夏までに、ボクがゼロになって――九条さんの夢を、終わらせる。
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