第17章 雨と月と輪舞曲を
『だって、ファンのみんなが天に会いたがってるもん。TRIGGERに会いたがってる。すごく、すごく。……私も、ずっとそうだった。わかるよ、だって……』
「だって……?」
『私は、天のファン第一号だから』
そういって、零は幸せそうに笑った。
―――ボクは今でも、キミを幸せにすることができたんだね。
ボクの歌で、ボクのダンスで、ボクの声で。
キミが幸せな気持ちになってくれる。
―――それは、子供の頃からの夢だった。
零の前で歌って踊りながら、スターの気分だった。目立ちたいとか、注目を浴びたいとか、そういう意味のスターじゃない。
零が、幸せそうな顔で笑うんだ。天、すごいねって。かっこいいねって。
キミを幸せにする存在に変身する、そんな感覚に酔いしれた。
自分の時間と命を無心で捧げる情熱を知った。それはいつしか、自分自身の意志へと変わっていった。
ボクの歌う姿が、誰かの目に映って、その人の胸を震わせて笑顔にする瞬間が欲しい。奉仕や献身じゃない。ボクの望みなんだって。
それを教えてくれたのは。
人を幸せにする歓びを教えてくれたのは。
他の誰でもない、キミだった。
あの時から、ボクの気持ちは――少しも変わっちゃいないんだ。
「……ボクはTRIGGERを終わらせたくない。TRIGGERを望む人がいる限り、ボクらを失って悲しむ人がいる限り歌い続けていたい。歌い続けなきゃ。ボクらを応援してくれたことを後悔させたくない」
『うん!TRIGGERは終わらない。……天は永遠に、私のスターだもん』
―――キミが、ボクを星だと言ってくれるのなら。
暗い夜道でも、キミが迷わず歩けるように
きみの頭上で輝いていよう。
約束するよ、キミが望むなら、ボクは星にでも、虹にでもなろう。
だから、ずっと見上げていて
キミが道に迷わないように
キミの歩く道を照らし続けよう
キミという光を頼りに生きてきた今までのボクのように
今度はボクが、キミの光になろう
もう迷うことなんてない。
世界が終わるその日まで、ステージに立って歌い続けるよ。
どこにいても、ちゃんとキミに届くように。