第17章 雨と月と輪舞曲を
それから、一週間が経った。
TRIGGERの独立騒動はメディアを騒がせていたが、或る日を境にぴたりとTRIGGERの名前を聞かなくなった。まるで――見えない法律で、禁止されたかのように。
そして、TRIGGERの穴を埋めるように、世間ではZOOLの人気が急上昇。今までのアイドルにはなかった見下した発言や態度が、優等生なアイドルに飽きていたファンから絶対的な支持を得ているのだ。
「やあ。天。待たせたね」
天の部屋の扉を開けた、九条が言った。
「九条さん……」
「これからの話をしよう。TRIGGERから解放された、九条天の話を」
「………」
「君は僕がプロデュースする。これからは、九条天一人で歌おうね」
そう言う九条に、天はこくりと喉を鳴らした。
「帰ってくるのが遅くなってしまって悪かったね。今日はもう遅い。ゆっくり寝て、明日ちゃんと話をしよう」
「………はい」
「それじゃあ、おやすみ」
がちゃり、と扉の閉まる音がしてから、天は小さくため息をついた。
彼の言わんとしていることは、なんとなくだけれど予想はついている。
天は机の上に置いていたスマホを手に取ってから、じっと画面を見つめた。
「……零……」
小さくそう呟いてから、自嘲的に笑う。
――こんな時に会いたくなるのは、声を聞きたくなるのは、いつだって一人だった。
「………」
しばらく画面を見つめてから、そっと机に置けば。
着信が鳴った。驚いたように目を見開いてから、まさかと思いながら画面を見れば。
「……。……キミって人は……」
画面に表示されている名前に、思わず笑みが零れてしまう。
――こんな時にボクに元気をくれるのも、そう、いつだって、キミだった。