• テキストサイズ

スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第17章 雨と月と輪舞曲を




「…っ、モモ、引っ張らないでくれ。せっかく久しぶりに零に会えたのに」


ずるずると百に引っ張られる形で連れてこられた了が、スーツを直しながら言った。


「……零には関わるなって言っただろ」

「え?もうモモには関係ないじゃないか!だって、零はTRIGGERに取られちゃったんだから」

「………」

「どう?愛する彼女を後輩に取られた気持ちは?悔しい?」


愉しそうに尋ねる了を睨みつけてから、百はゆっくり口を開いた。


「悔しいわけないだろ。零が幸せなら、オレはそれでいいんだ」

「あはは!モモはやっぱり、嘘つきだね!」

「嘘じゃないよ。了さんには、一生わかんないよ。本気で人を好きになるってことが、どんなことか」


面白くなさそうに話を聞く了に、百は続けた。


「…零を巻き込んだうえに、TRIGGERに妨害工作しやがって…」

「モモ。もうすぐ、予言がひとつ現実になるよ。TRIGGERはツクモのものになる。八乙女プロは堅実だ。息子のために会社をつぶしたりしない。僕のところに来たら、かわいがってあげよう。IDORiSH7、Re:vale、零も、僕のおもちゃにする。芸能史上最大のアイドルチームを作って、ZOOLを先頭に立たせるんだ。そして、熱狂する人々を眺めて、指をさして笑う。楽しそうだろ?」

「……あんた、嘘ついたろ。…あんたはアイドルに興味なんてない。アイドルが嫌いだろ」

「好意だけが興味の源とは限らないよ。それに、嘘つきは君達のほうじゃないか」

「な……」

「別に、どうだっていいんだけどね。……じゃあね、モモ。楽しみにしていてよ」



ひらひらと手を振って去っていく了の背中が見えなくなるまで、百はじっと睨みつけていた。




―――その日の夜。


八乙女社長は、TRIGGERをツクモから守るため事務所との契約を解除させることを決める。

事務所とTRIGGERが互いに負の影響を与え合っているこの連鎖を断ち切り、月雲に対抗するために――。

八乙女社長は、三人を信じていた。
事務所を失って、裸足になったとしても。彼らなら、ゼロから歩き出せると。


そして。

翌日のミュージックフェスタが八乙女事務所のTRIGGERとして最後のテレビ出演になったのだった。
/ 552ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp