第17章 雨と月と輪舞曲を
「……!了さん……」
『……!!』
「あ……。はじめまして。彼女のマネージャーをしております――」
「わあ!かわいいポニーテールだ。へえ、マネージャー?イケメンなのに?もったいない!」
万理の言葉を遮るように言ってから了は愉しそうに笑うと、睨むように自分を見ている零に視線を落とした。
「相変わらず可愛いねえ、零。いつになったら首輪をつけてくれるの?」
言いながら、了が零に手を伸ばした瞬間だった。
「……零に触んじゃねえよ……っ!!」
百の怒声が、廊下に響く。
万理は驚いたように、きょとん、と目を見開いている。
「…も、百くん……!?」
「あっ!ご、ごめんなさい!ごめんなさい!小鳥遊プロさんのタレントさんなのに、オレ、偉そうなこと言っちゃって…!」
「いや!それはいいけど、そちらの……」
万理が困ったように視線を向ければ、冷ややかな笑みを浮かべている了が百を見ていた。
「……MK5だよ、モモ……」
「なんだよ、それ!?」
「マジでキレる五秒前」
笑顔でそう言う了の腕を、百がぐいっと引っ張った。
「零!バンさんと早く行って!!……来いよ、了さん!」
『あ、ちょっと待って…!!百!!』
行こうとする百の腕を、零が掴めば。
それは思い切り振り払われた。
『………っ』
「早く行けよ!」
『……わか…った……』
消え入りそうな零の声が、聞こえていたかはわからない。
百は血走った瞳で了の腕を引いたまま、廊下を走っていってしまった。
零は振り払われた手を握ったまま、ただ、そこに立ち尽くしていた。